もうすぐ百の猿になる。/田中宏輔
 
とに気がついたのである。そういえば、そのとき思ったのだが、そういったことは、それがはじめてのことではなくて、いつも、ぼくの方から、ぼくが親しくなった友だちの話し方や身振りの癖を真似ていっていたのであった。別に故意にではなく、それがごく自然なぼくの友だちとの接し方であったのである。自然といつも、ぼくの方から、友だちに似ていったのである。「私は誰かによく似ている。」という言葉をもじって言えば、「私は、誰かによく似ていく。」とでもなるであろうか。成人してからも、新しく親しくなった友だちの話し方や身振りの癖といったものが、ぼくにうつるということがあって、あるとき、そのことにふと気づく、といったことが、よく
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