もうすぐ百の猿になる。/田中宏輔
 
えていく。


少女は永遠に縄とびをしているだろう。
(サルトル『自由への道』第一部・8、佐藤 朔・白井浩司訳)

ノックの音。父がはいって来た。
(G・ヤノーホ『カフカとの対話』吉田仙太郎訳)

 その後ろから、パパに瓜二つのパパが入って来た。二人のパパが、ぼくの机の横に立って何か言いかけたところで、またもう一人のパパが入って来た。と、思う間もなく、四人目のパパが、開いたままのドアをノックして、ぼくの部屋に入って来た。そうやって、ぼくの部屋のなかに、つぎつぎと瓜二つそっくりのパパたちが入って来た。ぼくのベッドのうえにまで立つたくさんのパパたち。ぼくも、とうとう立ち上がって、たくさんのパパたちのあいだで、押し合いへし合い、ギューギューギュー。うううん、暑いよ、パパ。うううん、痛いよ、パパ。ぼく、つぶれちゃうよ。ああ、もうこれ以上、部屋に入って来ないで。あああん、パパ、いたたたたた、痛いよ、パパ!



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