恋のため/はるな
いつか忘れられる恋のために
いくつもの花瓶が投げ込まれ、
濡れた足にはりついた花びらの色とりどりに
蝶やら虫やら寄ってくる。
雨雲がやってきて去っていき、
そのあとに何の植物かわからない草が芽吹く。
強い匂いがしたかと思えば小さな動物が腐りはじめていて、
日差しがそれら全部を焼いていく。
焼け残ったものたちは、
育った植物のわずかな影を奪い合い、
弱いものは日差しに焼かれて死ぬ。
死んだそばから消化されていき、
芽生えと、成長と、恋と、痛みが発生する。
記憶の薄い秋と冬をやり過ごしたのちに、
一枚の葉っぱを食んで太ったさなぎが、
ぱりぱりと音を立ててはねを広げる、
はねの乾く前に、いつのまにか広がったこの湖を、
わたしは、飲みつくさなければならない。
ならない なんてことはないのに、
せかされる、ひざまずく、広大な湖に口をつけ、
飲み干しはじめる。
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