清らかな猫の唄/森 真察人
 
あるじゃないか。

 そうかもしれない、と思った。

 清らかな目で思い起こせば、あの柿の木も僕ほど若くは思われなかった。

 振り向くとそこにはただの雪があった。その上に僕の足跡は確かに連なっていた。

 僕は哲学書の読み方について熟考しはじめた。

──お父さん、哲学書に対して素読的アプローチは有効かな?
──え? どういう意味?

 僕たちの目の前をただの猫が過ぎ去ってからしばらくして お父さんがつぶやいた。

──外に出てよかった。

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