種/夏井椋也
 
本もの茎が伸びていた

>この深い赤がなんとも大陸っぽいよねえ

なんだかそんな気がしないでもない

私も花の話が嫌いではないので
それなりにまともな相槌を打っていたせいか
老人は玄関前に次々と花を咲かせていく

>それはウノハナで。。。。。。云々
>こっちはイエライシャンで。。。。。。云々

話が二周目を終えて三周目に入ったあたりで

>おお、見事なもんだねえ 綺麗だ

別の老人の声がした

>実はこの花はね。。。。。。云々

バトンタッチ!

柔らかな眼差しの老人に丁寧に礼を述べて
その場を後にした

カメラで花の写真を撮っていると
思いがけない種をもらえる時がある

おそらく例の老人もいろいろな種を抱えて
花の前で足を止める人を待っているのだろう

やれやれ。。。。。。でも

また来ようと思った
花を咲かせてもらおうと思った

種から詩が咲くこともあるのだから




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