All Things Must Pass/ryinx
漂泊の時の彼方
伏せられた栞
緑の草原に風が吹いている
樹木にもたれて読書している
きみは近づいて訊く
「なにを読んでいるの」
雨粒は草地に落ちて雲間には嵐の予感がする
時々こういう日がある
窓が破れるほどの強風があたり一体を散らし
食器は棚から落ちて家々は軋みガラスは壊れる
テーブルのグラスは定位置から動かさず
紫の溶液はすこし波打つ
きみは近づいて訊ねる
「そこには何があるの」
線と線は永遠に交差することなく
やがてハイウェイになり
鬱蒼としたアウトバーンの景色を眺めた
雫。という名前だった
矢継ぎ早に質問をしていた
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