あの虫がいるのは窓ガラスの内側か外側か/ただのみきや
 

卒塔婆のような一行ではなかったか

愛を溶かして跡形もなく
返済できずに利子が膨らんだ
こころとは裏腹に
流す血は赤く濃く思いのほか熱いのに

メガネの縁に下着姿のきみが引っかかったまま
枯れた藤のように重さのない幻とは裏腹に
二人分の苦いはらわたを抱えた一匹の鱒は
実体はあってもことばに変換できない恐怖に寄生され
食まれながら釣り上げられるのを待っている

飛ばされる帽子の夢
それとも帽子が見る夢か
しゃぶる口としゃぶられる指
わたしという快楽の回路


                     (2024年5月26日)










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