ふざけた世界にさよならを/ホロウ・シカエルボク
たが、体力は並外れたものになっていた
奇妙な暮らしが俺の身体をすっかり作り替えたのだ
走り終えたあとで果物を齧るようになってから感覚は余計に研ぎ澄まされた
旧市街のさらに上、鬱蒼とした山頂近くの森林の中に、たったひとりで暮らすための街を作った
時々獣たちが遊びに来た
だから俺は狩りをしなくなった
自然に死んだ仲間だけを皆で食らうことにした
獣たちの誰もそのことに異論はなかった
果物と草、時々の肉
この山の生態系は独特のものになり始めた
獣たちも狩りをやめて、俺と同じように走り、食い、眠るようになった
獰猛な獣たちは穏やかな表情に変わっていった
俺は木を削ってオリジナルの楽器を作り、獣たちと歌った
いつか俺もこの森の中で、目を覚まさなくなる朝を迎えるだろう
そして俺はこいつらの腹の中に入り
俺が築いた生活はこの森の中でずっと受け継がれていくだろう
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