銀行と自転車、空/うめバア
銀行へ行った日、自転車で坂を下ると、急に夏の顔になった道がひらけて、水色の画用紙を引き裂いたように、夏空が目の前にせまる。ああ、もう夏か。
それで私は小学生の頃を思い出す
なんだかちょうど
懐かしさと
可笑しさと
悲しみを
食べやすい大きさに切って
お皿にちょっとずつ
置いたような感じ
思い出せることも
少なくなってきましたから
ちょうど人数分になるように
小さな思い出も、器に分けて
大切な人たちと
過ごします。午後
そうだと思っていた
退屈で、平凡だと
昨日と同じような今日と同じような明日と同じような明後日と同じような
時間は不思議
定期預金を
解約する日が来るなんてね
思いもよらなくてね
ねえ、おかしいでしょ
小学生の私に、私は尋ねる
明日は映画
よそ行きを着て行く
午後の授業はうたたね
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