引用の詩学。/田中宏輔
『波』鈴木幸夫訳)
それは悲しみであった。
(リスペクトール『G・Hの受難』高橋都彦訳)
だが 悲しんでいることも
これがわれらの悲しみであることも われらは知らない
(エドウィン・ミュア『不在者』関口 篤訳)
一冊の本は、どんなに悲しい本でも、一つの人生ほど悲しくはあり得ません
(アゴタ・クリストフ『第三の嘘』第一部、堀 茂樹訳)
不幸だけがほんとうに自覚できる唯一のものである
(マルロー『征服者』第I部、渡辺一民訳)
おそらく我々はそういう瞬間のために生きてきたのではあるまいか?
(ガデンヌ『スヘヴェニンゲンの浜辺』8、菅野昭正訳)
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