小麦の薫る男(サンドイッチマン)/本田憲嵩
 
って、「オレが出演してもなぁ、パンが広まるんじゃねぇ!ただオレが広まっちまうだけなんだよ!」って、「オレが広めたいのは、オレじゃぁなくって、あくまでもパンなんだよ!」って。「パンっていうのは、まだまだ外国の食い物ってイメージが強いんだよ!結局みんなオニギリにいっちまうんだよ!」って。彼はまるで半ば動揺を振り払うかのようにまるで自分に言い聞かせるかのように強くそう叫んだ。そうしてその瞳から迷いが完全に消え失せる。その視線とその魂からの叫びにまるで稲妻に打たれたかのように僕はそのことをつよく肌で実感する。彼は自分の地位やお金や栄光などの私利私欲にときおり揺さぶられながらも、あくまでも自分の使命はパンを
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