小麦の薫る男(サンドイッチマン)/本田憲嵩
ン」(月寒あ〜んパン♪)。なんでもこれは普通のアンパンを両手で握りつぶして小さくして作ったものらしい。それから「こつぶ」の缶を一本、「こつぶ飲む?」って、リュックサックの中から取り出して僕に手渡してきた。
そして、ちょうどまさにそのとき、彼の携帯電話の着信音が鳴りひびいた――。
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「ええ、いやですからね、もう何度も言っておりますが、そういうのはお断りしてるんで、はい、考えはもう変わりませんので、ええ、はい」、彼はその表情にいささかの動揺を浮かべながら、通話を切った携帯電話を自分のズボンのポケットへとしまい込んだ。僕は思わず今の電話はいったいなんの電話だったのか?と尋ねてみる。
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