五反野/形代 律
 
令和の五月
夏のようでも冬のようでもある夢の白昼
暑さに震えて
五反野駅前を歩いた

わたしのわるい眼では
通行人の姿が見えない影だけが揺らぐ

バス停では
不揃いの椅子が並ぶ
どこかの事務室の椅子と学校の椅子が
ふたつ土埃に汚れている

一方を手ではたく
座り込みバスを待つ

通りの対岸の
交番を眺めていた
そこに人間がいた時代など一度もないかのように
ずっと無人だった これからもずっと

バスは来ない
時刻表に予定のない停車場
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