迷宮の蜂/ただのみきや
 
を失くし
血のようにわたしのなかにこぼれ出す
      花よ
その目のなかの夜よ


ことばとはいつもずれがある 
影や鋭い照り返しのように

飛び立った蝉と
飴色の抜け殻のように

遺書と残り香のように

そしてこころとも
産んだ子が
自分ではないように


風にあやされ
たどたどしい足取りで
木蔭をくぐり抜け
日向の芝草を踏みながら
幼子の和毛につもる日の光を
目に収めきれず

 瞑る 夜の
池に浮かんだ
得体の知れない水音のように
泣く夢を
目覚めてもなお
扉はなく
開きっぱなしの窓ばかり



                      (2024年5月18日)








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