エイフェックス・ツイン、永遠に(改稿)/由比良 倖
十歳を迎えた。三十歳。ただ単純に生きているだけでは許されない歳を迎えてしまったのか、と彼女は思う。ううん、いや、新しい人生の始まりとして、これほどいい年齢もない、とも思う。けれど、すぐにやりたいことは何も無かった。これから出来ればいいことは山ほどあったけれど。
誕生日の日、彼女が得たものは、十年来付き合っていた恋人との別れだった。それだけだった。
「プレゼントは?」
沙恵は笑って言う。
「ああ、うん」
それが、彼の最後の言葉だった。彼は、沙恵に電話をしながら、沙恵の家に来る途中、近道である裏道を通り、そして暴漢に襲われて死んだ。
その日から沙恵は、毎日、あまり食べず、水だけを飲み
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