燃える時間/積 緋露雪00
の
悍ましいまでの立ち姿が漆黒の闇を纏って
焔の芯にあるのみなり。
やがて斃れるであらうが、
それまでは燃える朽ち木は燃える時間と化して
此の世を闡明する。
その生命の最期の焔のみが此の世を照らしめては
存在の荒荒しさのみを曝す。
漆黒の闇を纏った燃える時間は
見るものを高揚させはするが、
然し乍ら、其処に哀しみは全くなく、
況してや此の世への未練も全くなしや。
死は潔いものであることを燃える時間が圧倒的な迫力で見せる。
生くる事の意味を問ふ馬鹿らしさに倦み疲れたものは
既に燃える時間に焼かれてゐるに違ひなし。
さうして森羅万象は生を閉ぢては、再び目覚めし時を待つ。
残るはその灰燼ばかりなりしや。
燃え残った時間は
熾火の如く再び死に行くものへと取り憑いて
憤怒の焔を燃え上がらせるのだ。
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