釣りをした日、雑誌/番田
時々川に行くと、僕は釣りをしている人を、そこで見かける。彼らは、仕掛けは投げずに、ヘチ釣りという釣りをしているようだった。川からは、音もなく辺りは静まっていたが、でも、時々屋形船が通り過ぎていく波が立っていた。目黒川で桜を見ている時も思ったが、都内では静かな場所というのは騒音に常にさいなまされてしまうようなのだ。よく知らないような連中がそこにボートでやってくる轟音がしていた。そう考えると、器を見ている時のような完全な静寂のような、そんな、静かな余韻に浸れる場所というのは、街はおろか現代の自然の中には、僕は、存在しないような気がする。そのようなことを考えながら、堤防の壁に触れると、切り出した石だと思
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)