蜥蜴の行方の先の素描/ホロウ・シカエルボク
を隠す低い壁を蜥蜴が這っている、俺は本を閉じて蜥蜴を眺める、あくまでも俺には、ということだが、蜥蜴はなにも目指していないみたいに見える、ただ辺りを窺い、においを嗅ぎながら、今日を生き抜ける場所だけを探しているみたいに見える、俺はそんな手前勝手な解釈に強いシンパシーを感じる、今日を生き抜ける場所だけを探す、それはとてつもない理由のように思えたからだ、俺が言葉を綴るのだってきっと、そんな欲求の為だけに違いない、便宜的な、あるいはスローガン的な真実ではない、その瞬間自分を急き立てている衝動の本質だけが俺の欲望なのだ、蜥蜴はある瞬間に突然に向きを変え、僅かな土の上に生えた雑草の中へと姿をくらましてしまう、
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