蜥蜴の行方の先の素描/ホロウ・シカエルボク
なる、ははは、渇いた笑いが漏れる、そうさ、表現するということはそういうことだ、スプラッタ・ムービーと同じで、どれだけ瞬時に沢山のものをぶちまけられるかという企みなんだ、少しの間思うままに文字を打ち込んで、集中が途切れる前に止める、それから目を閉じて少し眠る、夢の中で俺は、さっき草むらに消えた蜥蜴を探してずっと裏庭に這いつくばっていた、草や猫の小便の臭いが激しく鼻を突いた、蜥蜴はその痕跡すら残さずにどこかへ消え失せていた、俺の胸中には悲しみとも怒りともつかない曖昧な乱れが生まれ、温帯低気圧のように居座っていた、俺は目を覚まし、コーヒーを入れて二杯立て続けに胃袋に送り、それから続きを書き始めた、あの蜥蜴の残像が消えてしまわないうちに書きあげてしまわなければ手遅れになる気がした、そこに理由なんかない、人生のすべては賭けだ、自分が立っている場所すらわからないまま、どこに届くのかもわからない言葉を投げ続ける、それは死ぬまで続くような気がする、そうさ、俺はとっくに覚悟を決めているんだ、ああ、と俺は気付く、テーブルの上でわらわらと蠢いているイメージ、これこそが俺にとっての蜥蜴の尻尾なのだ。
戻る 編 削 Point(2)