痩せた猿が誘蛾灯の下で/ホロウ・シカエルボク
 
でもこの檻は―あの猿はどこへ行ったのか、退屈そうにしていた店員は―東の空が白み始めていた、俺は不意にそんな夜明けに飲み込まれそうな気がして、慌ててその場を離れた、小さな街の寂れたラブホテルにひとりで入って少しの間寝かせてくれと頼み料金を払い、昼過ぎまで眠った、世界は平気で嘘をつく、目覚める前に見た夢の中で誰かがそんなことを呟いていた、起こったことをそのまま受け入れるしかない、諦めてホテルを出て、バスに乗って自分の街に帰った、現実には隙間があるのだ、いつかもしかしたら、あの檻の中に自分自身が潜り込んで近くを通りがかる連中を片端から呼び止めているかもしれない、それはやはり夜だろうか、それはやはり誘蛾灯の下だろうか、見慣れた帰路がまるで違う道に思えた、道の向こうから吹いてくる風が、もうすぐ雨が降るだろう生温さをまとわりつかせていた。

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