チェロの深い音/flygande
 
1、

肥料袋が
日を浴びている休耕地
目の詰まった麻布を
砂地と見ちがえた蝶が
飛びあぐねたまま雲は過ぎ

菜の花の花粉を
集めて回る音
ひと気のない路地裏には
魚の血を洗う匂いが
少しした

休診の整体院の
庭で眠る猫
聴診ではきこえない
場所にある心
骨が曲がっている気がするのに
確かめるレントゲンは
晴れた原野に置いてきた

心と体を
ときどき逆にする
それで治る病気もある



いい天気ですねと
警官が言った
わたしを怖がらせないように
優しい声で座った

土に返す
ことのできない言い訳が
生物濃縮して
口内にはこ
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