手遅れの手前/ホロウ・シカエルボク
 

落ちぶれた世界の歯軋りが俺を眠れなくさせる、飲み干した水の入った、コップの底に張り付いていた潰れた小虫、排水溝の向こうで今頃、呪詛を吐き続けているだろう、小さいから、弱いから、儚いからで納得ずくで死ねるわけでもないさ、熱い湯を出して頭からかぶり続けた、ナルコレプシーみたいな脳髄、クリアーにならない理由が欲しい、水を飲んだグラスは少しのミスで欠けた、だから流しの中で叩き壊した、手のひらで集めて生ごみに混ぜ込んだ、案の定切れた左手の人差指、血が止まるまで水をかけ続けた、深い傷ではなかったけれどなかなか血は止まらなかった、まるで生命が俺の身体から根こそぎ逃げ出そうとしているみたいだった、彼らを閉じ込
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