しぼ虫/菊西 夕座
世界のそらをうすくのばして
サランラップより光るソランラップをあみ
おいそれとは生きもせず死にもしないまま
木々のはだぎをまとわせる粗家をあいして
めぐる季節に木々がみどりに色づいたなら
つやめく繁みにいだかれた粗家をめでては
しぼみにしぼんでいったきおくの棺をあけ
夜よりも宇宙よりもくらい席にこしかけて
リモコンをくどうさせながら地下にもぐり
電池のまきものをひもといてねつをにがし
ひえてしまった地底にみなしごを旅ゆかせ
みずからはひとのはなの穴へとしのびいり
しぼ虫が片穴をながくしぼませるときには
しょんぼり虫がもう片穴をさらにしぼませ
そうやってたがいにたがいをはげましあい
ひとがぜつぼうしない呼吸法を敷かせます
医者がふちどる病の輪郭からはな汁はもれ
学者がかたどる知性の磁極を砂鉄がおおう
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