しぼ虫/菊西 夕座
しぼ虫はしぼんでしぼんでしぼみつくして
しょんぼり虫とであえたころには四月の宵
単四電池にまきついてだきついてころがり
ベッドの下にまで旅にでたらわすれられて
からっぽのリモコンの席にほこりがたまり
いつまでも電気はつかずに春が老いました
春の老成にえきもれた夏のつばさはやせて
ひからびたセロハンみたく筒状にくるまり
単四電池をつめこんでも羽ばたかないまま
しぼ虫のせなかで秋風をふかす小砲となり
やがては種のつきた冬の空砲とむすびつき
しょんぼり虫としぼ虫は忘却をうみおとし
おもいだす日をはげみにみなしごをそだて
しらない人たちに挨拶するゆかいさを餌に
しぼみきった世界
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