アルテマ/長束静樹
 
夕陽が走ってくる
いびつに走りつづけるおれに
それはそれでかまわないと
聞こえてくる
夕陽が輝きをましながら走ってくる
虹の魚は歌っている
花束のような喉で同じことを歌う
虹の魚は母
虹色をした魚ではなく
母はほんとうに虹の魚だった

街を眠らせるの
おおきくなれば眠りをさそうのよ

でもおれは朝にすぎなかった
朝はおおきくなることはないし眠ることはなかった
でもどんどんいびつにはなった
陽の光脚が中心点から放射し いびつな
時の輪を避けながら 
おれの切先にまわりこむ
でも虹の魚は歌うのをやめない

おおきくなればいびつではなくなるのよ
いびつでも おおきく 
おおきくなれば誰もいびつだとはわからなくなるの

ああ うるせえ
おれは凍りついたような半永遠 明らかに
そういう朝にすぎないんだ
だから頼

おれに海をくれ
半永遠が体を
さますから 喉を燃やす酒のような海をくれよ 
骨まで溶かす 
腐った春の海のような海をおれに くれよ 

街はもう光の中
おれは叫ぶ 
アルテマ!





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