戦い/藤原絵理子
 
道路に落ちて
雨に濡れた紙飛行機は
どうしようもなくみっともなくて
翼に乗せていたはずの夢は
タイヤの模様に変わっている
行き交う車に踏まれて
アルミニウムの円盤になった
一円玉が隣でしょぼくれている


あたしと二人で
瀟洒な地中海風の塀越しに見える
春の初めの白い木蓮を見た
あの小説家は
どこか遠い場所の
暗い穴の中で飢えている


敵に背中を向けるな
前に飛び出した臓物が
空っぽなことを
敵に見られるのは恥だから

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