花見/たもつ
 


指先から
こぼれ落ちていく
あなた
残り香と
囁き

名前を書いただけで
手続きは簡単に終わった
繰り返される
日々も
生活も
日常も
時代という言葉に
擦り減っていく

儚さだけで
生きてはいけない
それならばせめて
最期まで燃え尽きて
消えろ

わたしもまた
あなたの指先から
こぼれ落ちていく
間際に二人で見上げた
それはきっと
咲き始めたばかりの
桜だった





(初出 R6.3.26 日本WEB詩人会)


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