失明/日々野いずる
 
夏の陰の濃さが地面に染み付いて
光だけ眩しくて行方を暗ます
目の瞬きの速度が
飛蚊を同定し
影を居ないものとする
私、生きている
こうやって生活して物を食べて
掃除してみたらし団子食べてジュース飲んで
下らない質量を増やし
自分をなくしたいのを生命が邪魔をする
光が光が光が影を消す
同じ警告音がちらつく
赤の音の狭間が
飛び込む契機だったのに
眺めて通り過ぎる
どうして
それ以上の詞が続いていくことはなく
私、私、私、私しかいない
意識に私しかいない
自分の考えで頭が満ち満ちて
理想像の幽霊と同居する
食べて飲んで吐いて吐いて
自分の質量を軽くすれば
それになれると思ったの
飛蚊の分際で
目眩と暗闇に音楽がなって
鳴ってたのが踏切で
君をなくさないように
私をなくして
夢に浸る愛
愛していました
なくしものは見つかりましたか

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