鏡像 【改訂】/リリー
 
初ボランティアで此処に来て、そのまま准職員なって
 んやわ」
 それしか、彼女へは返答しなかった。何故、高齢者施設の現場で介護支援
 に携わりたいと思ったのかを、誰にも話した事は無かったのだ。
 


  第九章 「夜光雲」


 「メシ食いに行かへんけ?」
 「今、何時やと思ってんの?」
  金曜日に二十一時も回ってから高校時代の同級生が電話をかけてきた。
 「ええやんけ。俺、明日休みなんや」
 「あたし休みちゃうやんか!」
 「ええやんけ。ちょっと付き合えよ」
 当時ちょうど携帯電話の出回り始めた頃で、大橋君はもう私のマンションの
 下に居ると言う。
  卒
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