鏡像 【改訂】/リリー
院患者の世話で、施設と病院を往復するスタッフ。インフ
ルエンザに感染した職員が、十分な休養も取れずに出勤する。感染者の居
室へ出入りした職員が、手の消毒だけで感染していない入居者の介助に当
たる。これでは、院内感染しても当然であった。
「なあ、……。木崎さん、なんで? 何でこれニュースにならへんの? お
かしいんちゃうの?」
「あだちっ、……。此処でも何処でも、そんなん言うたらアカンで。そんな
ん言うたらな、あんた勤めてられへんようになる」
釘を刺す彼女の低い声。何故マスコミに報道されなかったのだろうか。
免疫力の低い高齢者達にとって施設は、生命の安全を確保出
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