鏡像 【改訂】/リリー
 
院患者の世話で、施設と病院を往復するスタッフ。インフ
 ルエンザに感染した職員が、十分な休養も取れずに出勤する。感染者の居
 室へ出入りした職員が、手の消毒だけで感染していない入居者の介助に当
 たる。これでは、院内感染しても当然であった。
 「なあ、……。木崎さん、なんで? 何でこれニュースにならへんの? お
 かしいんちゃうの?」
 「あだちっ、……。此処でも何処でも、そんなん言うたらアカンで。そんな
 ん言うたらな、あんた勤めてられへんようになる」
 釘を刺す彼女の低い声。何故マスコミに報道されなかったのだろうか。
  免疫力の低い高齢者達にとって施設は、生命の安全を確保出
[次のページ]
戻る   Point(6)