くじらの歌/中沢人鳥
 
すべてのくじらが歌うのなら
すべての露草が雨滴を抱きしめる
単純な対応関係ばかりの夢では
エンドルフィンに支持された
懊悩が硝子体を濁すばかりだ

雲のあわいから垂れる雷は
鉛直方向に空を切断する時
誰も聞こえない泥の涙を謳う
煩雑な波のもつれに目を瞑り
真っ直ぐにはもう歩けない
紙芝居を見ている淀んだ眼に
安息日は虚に映る

一連の営みは続く
二つ目の瞼を閉じて
三つ目の瞼を閉じて
ずっと奥であらゆる灯を大切にしたかった
この先に怯えることが
二次応答の証左となるにはまだ碧い

地割れに吸い込まれる鼓動
外核にあっては鉄の心
朱雀の方位に太陽は止まる
我々はいつから左脳でそれを
見るようになっただろう
私は
あなたは
いつから我々から独立だと
信じていたくなっただろう
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