その優しさの名前は夜/黒ヱ
 

対の果ては見えない それでも立ち尽くしているのは
相を浮かべては思い焦がれて 待ちわびていて
飛び去る轍は偏東風(やませ) もう寒さがそこにいるから

だから
「ほら稲穂がこんなにも靡いて」
綺麗な声色は色褪せずに

絶えず揺れているのは 物悲しさを忘れるためだろうか
さざ波の水面には触れないように それでも手は伸ばして
動いているもの また止まっているもの
それは複数とひとつしか いないように思えた

あおみ 伸びる緑の線に願いの所縁を聞いて
携えている重きを 何処に無くしてしまったのか
あなたに あなたに 聞きたくて
甘さを抱いて 空を噛み締めた 隙間から漏
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