鏡像 【改訂】/リリー
十二年四月か
ら始まった介護保険制度の以前に、施設で働いていた私達は、専門知識を修
得し現在の国家資格を取得する職員とは違って、当時「寮母」と呼ばれてい
たのだ。
私より半年早い入社の木崎さんは、お互いにシフトが日勤だと同じ地元の
私を路上で見つけて拾ってくれる。
更衣室で、隣り合うロッカーの木崎さんは声をひそめる。
「あだちぃ、今日もそれぇ……パジャマやんか」
「何言うてはるんですか! 人聞き悪いなあ。れっきとしたトレーナーで
すって」
目で笑い返す私へ、彼女のこもった笑いに歪む口元。
「あたしの目には分かる! あんた、いつなったらパジャマ脱
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