鏡像 【改訂】/リリー
 
寮母や若い生活指導員では、馬場さんに通院を勧めて臨床心理士のカ
 ウンセリングなどを受けてもらえる様な、精神面で必要なケアを提供する事
 も、出来なかったのだ。

 「このところ……岡本節、もう聞くこと無くなりましたねぇ」
 「仕方ないわよ。薬で……今朝もトロンとした目ぇしてなぁ……」
  この日は、目覚まし時計のアラーム三回で起きられず、お昼にコンビニの
 おにぎりの包みを開きながら、先輩らの話を聞いていた。
 「私らにだけなら問題無くても、他の入居者さんから苦情がくるんやから」
 旧館一階を担当する寮母は皆、この岡本さんから廊下にまで聞こえる罵倒を
 浴びせかけられ、さんざ
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