鏡像(15)「長い夜」/リリー
「労働基準法に引っかかってもおかしくないなぁ。」
ハマさんは若手職員の愚痴の吐きどころになってくれていた
宿直室で仮眠体勢に入る午前零時過ぎ
ガラリッ、開いた木戸
そこに小さな黒い影
モゴモゴ 入れ歯を外した口は訴える
「ご飯まだか?まだなんかっ、食べてないんや。」
睡眠導入剤の効き目が悪かったのか?
呆けた顔で徘徊なさる八十代女性
深夜のオムツ交換は異常なし
午前五時半なって出勤して来た若手職員の先輩
「どうやった?」
「うん。何事も無かったですよ。」
「よかったやん!ラッキー。」
そう、たとえどんな夜であっても騒動にさえならなければ
ラッキーなのだ
宿直手当の五千円なんか要らないから
自分だけシフトから宿直を外して欲しいと主任へ
本音を言うベテランもいたのだ
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