リリシズムが泣くのです/秋葉竹
を
すくなくともこの街には
降り注いでくれているように
肌を噛む猫の牙みたいな甘い痛みが
ひとびとのハートを
チクチクと刺激するのです
そこにもここにも
美しい想い出はまるで落書きみたいに
自由に描かれているのだけれど
彼女のほんとうの天国は
美しい声の転がるあの部屋の
ベッドの上にしかないのですね
それがそうなら
こころに転がるこのしあわせのパンを食べて
こころの奥で笑えているこの時間に
ほんとうみたいな月が静かに動くのを
みているのも
悲しみを棄てさるためには
まぁいいではないかと想うのです
そしてあの部屋へ帰ろうと
想ったって
ぜったいに過去には戻れない
寂しさに
泣いたって
それはそれだと想うのです
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