鏡像(12)「えええ……。」/リリー
ず お弁当の箸が止まる
月に二度、木曜日の午後になると
大食堂で喫茶サロンが開かれる
八十代で認知症の男性、通称「欽ちゃん」の座るテーブルへ
集結する女性陣
欽ちゃんにモテているという認識は全く無い様子
何とも言えない、穏やかで小さな男の子の様な表情が人気の的
彼にニコニコ照れ笑いされると
これがまた 母性本能を擽るのだ
この微笑ましい情景を眺める私へ
歩み寄って来たのは
新館の一階を担当している四歳年上の先輩
「あだちぃ、あそこのテーブルがな、ヤバい状態なんやで。」
別のフロアの一角へ私の目を向けさせる
集っているのは、何事も無く朗
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