鈴絃──いつか誰かが書いた詩/ただのみきや
 

山百合は ゆらめいて 
 香(か)に通う 蝶は焔に

聞き耳の はるか端
 蝉落ちて 鳴らす水絃(みないと)


  もどる道なき
  まだ見ぬ淫ら


ことば侍らせ
  人遠ざけて

月から降りる
  蜘蛛さかしまに

歌は幽鬼に
  姿を変えて

まとう薄衣
  闇はほのかに


来る者も 絶え果てて
 価値もなく 朽ちるまま

誰の記憶の 残り香か
 声をからした 名も忘れ


                 (2024年3月9日)







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