鏡像(10)「I さんの記憶」/リリー
 


 食事介助で私が彼女のテーブルから離れ
 別の方の介助に付くと
 食事を終えて病室へ戻る時いつも
 私を睨んで怒るのだった

 寮父が宿直業務へ就いた日の朝礼で報告される
 認知症のIさんの、オムツ交換への激しい拒否と抵抗
 「こんな状態ですわ。」
 ユニフォームの袖口の腕には赤い引っ掻き傷
 
 女性としてのアイデンティティは護られなければいけない
 
 寮父が宿直勤務の日
 Iさんの深夜のオムツ交換は行わないまま
 排尿でどっぷり重たくなったオムツを、
 早朝の早出出勤の職員が交換するようになったのだ
 
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