鏡像(8)「コミュニティ」?/リリー
「新館の二階、また部屋替えあるみたいですね。」
相部屋なので、入居者同士の相性の問題が生じてくる
「もめてんのよぉ、永田町。」
「また××さんと△△さんの派閥ですか?」
旧館の寮母室の片壁に寄せられる高い二台のロッカーから
厚手のB5ファイルを数冊抱えてドカッと
デスクへ置く私に
「あだっちゃんなぁ…分からんやろけど。二階、ドロドロやで。」
「ドロドロなんですかっ?」
「そうや。あんた、まだ知らんでもいい世界や。」
五十代の先輩はデスクの脇に積み重ねた措置台帳の
「寮母日誌」を、綴る手を止めて
それ以上は語ってくれない
当時、寮母室
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