鏡像 (3)「秋海棠」/リリー
あれは 昨年の秋のこと
サバトラ猫のアタシが居候している
竹薮と雑木林の土手の裏にある大きな家の
離れの建物の中庭に行くと
「あ、鈴ちゃん来たわ。」
迎えてくれる おばあさんと
そこに見知らぬ女性が一緒だったわ
この時、初めてアタシも彼女と出逢ったのよ
×××
この日 彼女は、
玄関先の砂地に植っていた芒(すすき)を一本
辺りに人目の無い事で魔が刺して
引き抜こうとしたのだ
上手く抜けずに手こずっていると
「あげようか?」
いつから見られていたのか?
泥棒の背中
そこには手押し車の老女がニッコリ笑って居
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