逝くまで書いて/ただのみきや
顔は腫れあがる
友人たちは怒りに燃え貯金箱をたたき割る
小さな殺意がいっぱいに詰まった少女のトルソー
転がるビー玉は立ち位置の傾斜を示していた
宇宙を内に秘めた青い自画像
白く濁ったふたつの地球
街ではイルミネーションで縛り上げられた
幼い窃盗犯が活字の中で見た星明かりに飢え
二匹のオタマジャクシを暗闇へ放流した
すぐに手足が生えて息もできなくなると知りながら
一瞬の永遠を追いかけて失明するのも厭わずに
霧の中を裸で歩き回っても
ぼくらはアダムとエバにはなれなかった
みな去勢されていった
最後に見えたのは若草色の鬣をした馬
その黒い眼球に映った姿
自我を爪
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