雨に捨て猫/itukamitaniji
 
ールを買って アパートに帰った
まだ猫の匂いがする 大好きだった匂い
ひょっとして捨てたのは 私の心かもしれない
愛せなくなる前に 諦めてしまったのだ

cat
排気ガスで 汚れてしまった毛並み
雨が降って 染み付いた汚れを洗い流してゆく
濡れた段ボールの家に 傘を立て掛ける者が居た
そんな物は僕には もったいなくて申し訳ない 

she
気がつくと眠っていたようだ 少し酩酊していて
自分勝手なものだ こんなに独りが寂しいなんて
何事もなかったように ちゃんと後悔していて
まだ明けない町へと アパートを飛び出した

cat
やっと段ボールの家を 抜け出す決心がついた
ここに居たって いつまでも止まない雨
行く先々で 突然の雨を睨む人の目
あの人は濡れていないだろうか ふと思った

she
何もかも遅かったみたい 猫は居なくなっていた
置き去りにされた傘 いつまでも止まない雨
きっと誰か優しい人に 拾われたのだと
都合の良いように解釈して 生きていくしかない
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