つり革/
まーつん
ぼんやりと立っている
つり革に掴まって
結露した窓に
街明かりが滲む
あの灯火の向こうに
届かない温もりがある
ぼんやりと揺れている
つり革に掴まって
この手を滑らせる
誰かの汗の名残がある
鉄の車輪がガタゴト歌う
暖かい椅子は眠りを誘う
栞を挟んだ記憶のページが
瞼の陰で捲れだす
無数の人の沈黙に
甲虫が恋しくなる
指先に乗せて
無言で語り合いたい
素敵な出会いを思わせぶる
小憎らしい春が来ることを
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