はばたきは、いつか/ホロウ・シカエルボク
 

鳥たちがどこに飛んでいったのかなんて知らない、一度も
調べたことすらない、だけど
羽音が鳴る、羽音が鳴る、たくさんの羽音が鳴るの
それはわたしの背中に針を刺すように響く
たくさんの鳥たち、わたしは、あのときにきっと
言葉では拾いきれないたくさんのものを見たのだわ、追いかけてはいけない、その瞬間の出来事はなにひとつ
バスルームで思い出すだけにしておかなければならない

知らない朝の中で目覚めるときに、わたしは産道からはみだした日のことを思う、きっとそれは
長い目で見ればそれほど違いはありはしないのだ
わたしは赤子のようにたくさんのものを見た
そしてそのたびに
綿毛の心臓はたくさんの血液をわたしの体内に吐き出し、飲み込んだ
血液の材料がいったいなんだったのかなんて思い出せない、だけど
きっとそれは全身に刻まれているに違いない
わたしには言葉があり、音楽があり、画用紙がある
鳥たちはいつかあの場所に帰るだろうか
でもきっとわたしは
いつだってそのことを知らないままでいるに違いない


戻る   Point(3)