離島/形代 律
 
どうして
こんなに平穏なのか
冥土へと導く と信じられたホトトギスも
いまは五月の鳥

森を抜け
砂の砦みたいな監的哨跡にのぼって
海のまえに出ると
もう詩に出会った気がした

壁の白い斑点を
銃痕か
ただの落書きか確かめもせず
均された土地を歩く
死も恐怖もない
綺麗な景色に歓待されながら

午後には帰るから
この島の夜や
嵐の表情にも
出会うことがない

きょきょきょ と囀る陰影や
漁の網を結う老人の顔つきも
記憶から薄れて
友だちに送った
写真の海だけが残る

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