フライングバス/イオン
 

タバコで一服の時代から
スマホで一服の時代に変わったのだ
肺は汚れなくなったが
脳が汚れているのではないかと思いついた
情報をフライングすることで

次のバスは予想通り2分早く来たので
ダミ声の運転手にクレームを言うと
乗る人がいないから
停留所に停まらないので早くなるのだと
悪ぶった様子もない
バスはフライングを棚上げにした

遅れて参加した飲み会では
既に酔ったメンバーを
しらふで見る機会は初めてだった
酒が入っても本音が出ている訳ではない
噂や裏話を聞くことで特別な人になろうと
情報をフライングし合っていた

帰りの終バスでは眠ってしまった
遅れて参加したと速いピッチで酒を注がれて
けっこう酔ってしまったのだ
運転手のダミ声で起こされたのは隣町の終点
うなだれてベンチに座りタクシーを呼ぶ
タクシードライバーにバスのフライングの愚痴を言うと
「そんな特別な夜に参加させてもらえて光栄です」と
できた人間が締めくくってくれた
戻る   Point(4)