詩を書くこころ/岡部淳太郎
 
を書くこころだけが、
いつしか彷徨い出るようになってしまった。今日は冬
の乾いた小春日和で、いかにも詩を書くのにうってつ
けの日だ。詩と冬は親和性が高い。だからなのか、今
日の詩を書くこころはどこかうきうきと嬉しそうに見
える。僕はそれを見守って、それでもまだどこか不安
な気持ちでいた。害はないとは言え、詩が変なもので
あるのに変わりはない。頼むから人に迷惑をかけるな
よ。そう思ううちに、詩を書くこころは一通り遊び終
ったのか、にこにこしながら僕の元に帰ってきた。お
帰り。これから家に戻って一緒に詩を書こう。詩を書
くこころはうなずいて、僕の胸に飛びこんできた。冬
の風にさらされたためか、詩を書くこころは少し冷た
くなっていた。これからこいつを家で温めてやらなけ
ればならないな。僕は微笑み、詩を書くこころと二人
で家路へ急いだ。その時ようやく日が翳り、僕たちの
背後で夕闇が落ち始めた。人々がざわめき出した――



(二〇二三年十二月)
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