のらねこ物語 其の八「裏長屋」(ニ)/リリー
る長屋の女房たちが、
やけに纏わりついて鳴くイワシの様子に話しかけて
後ろを着いて行くと
無理して床から起きたお静さんが、土間で倒れておった。
「ほおっ、そうだったのか!お手柄だなぁ。」
「今は、鍼灸医の梅安先生が往診に来てくれているから安心だ。」
「梅安!あの、貧乏人からは診療代を貰わぬという事で、
人気の先生じゃな。」
話す浪人の友だちの
イワシを見つめる
少し窪んだ目
こいつ…一見
「アッシにゃぁ、関わりのねえことで。」てな、台詞が似合う
どこか、ぼろぼろの妻折笠被り、道中合羽を羽織って
長い楊枝咥え
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