一頭の悪魔/ひだかたけし
 



薄暗い
漠然と広がった
空間のなか
台形の
ノッペリとした
大人の背丈半分程の
鉛色の工作機械が
等間隔で何台も
一列に並べられている

大きな金属音があちこちから
互いに呼応するよう
規則的に響き渡る

人影は全く見当たらない

三歳の私は
並んだ工作機械の一番奥隅で
両耳を手の平で強く塞ぎ
背をできる限り丸め
うずくまっている

私は
自分の存在が
ナニカに気付かれてしまうこと
そのことにただひたすら怯えている



いつのまにか工員が一人
機械工場の入口に立っている

工員は
灰色の作業服姿に
つばの付いた

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